第 77 話
  男は大変
 

 これはもうずいぶん前のお話だが、日本のある男性用メジャー雑誌にリサーチを頼まれたことがある。「ユープリマ」という、言ってみればあのバイアグラみたいなお薬のリサーチであります。つまりインポテンツの男たちにとっては、またまたうれしい新薬が登場する、というわけだ。

 バイアグラで心臓発作を起こしてたくさんの人が亡くなったけれど、実はユープリマもまたけっこう危ないのであります。この薬は脳に働きかけ、脳がエッチなことをムラムラ想像することで、下の方をボキボキ状態にするらしい。だからバイアグラよりは安全である、とこの新薬のメーカーは言うのですが、脳に効く薬、なんて、どう考えてもこわいと思いませんか。

 実際この薬の調査実験のための服用後に、何人かが突然意識を失って後ろに倒れて頭の骨を折った、なんてことが報告されている。また服用後にクルマを運転していて、ふっと意識不明になって事故ってしまった、なんてことも起こっている。それでもまだ、心臓発作という命取りな状態よりかはぜんぜんマシ、と言うところがなんともやっぱりアメリカだなあ、と感心してしまします。ちょっとでも危険性があるなら、販売許可なんて出しちゃいけないよね。薬ってのは 安全性がいちばん重要だと思うんだけど。

 なんて慎重な発言をすると、「キミは立たないということが、どれほど男にとって深刻なことかわかってないから、そんな悠長なこと言ってられるのだ」と、男どもに言い返されてしまった。ボキボキに立つのなら、命にかかわろうと意識失おうとどうってことないんだって。だからこそ、少々リスキーでもあのバイアグラがあんなにも売れたのだろう。少々人が死のうが発売禁止にならないのも当然であります。

 確かにこのリサーチをやっていて、いやはや男は大変なんだなあ、と勉強になりました。強いセックスのできる男は、男としての勝者であるようです。キムタクみたいなかわいい男の子がいい、なんて女がいくらきゃきゃあ言っても、男は信じない。いや、たとえキムタクみたいなかわいい外見でも、あそこはしっかりボキボキでなければ男は自信を失うようであります。あそこのボキボキ度は男の自信度であるようです。

 私のまわりには、残念ながらインポテンツの患者さんがいないので、リアルな悩み相談話が聞けないのですが、今や年寄りの問題じゃないんだよね。30代からインポテンツになってしまう人も増えているそうですよ。

 それである日本人カップルのことを思い出した。彼らは子供が欲しかったんだけど、どうしてもできない。実はその35歳のダンナがインポテンツだったのよね。彼女はそれはもう深刻に悩んでおりました。それで結局体外受精で子供を生んだのですが、いまだに彼は立たないらしい。奥さんももうすっかりあきらめて、今は子育てに情熱を注いでいる。もしかしたらバイアグラくらいは試しているかも。

 ところで、インポテンツってのはちゃんとした病気なのであります。ハゲとかデブとはわけが違うのであります。そして、この病気にかかっている男の数はアメリカだけで3ミリオンにものぼり、その数はシティを中心にどんどん増えているらしい。悪いことに、病気であると本人が意識してないものだから、きちんと治療を受けている人の数はわずか5パーセントなんだって。おや、さすがに今回は統計的数字なんか使っちゃって、かなり論理的ですね。

 まあそういうわけで、その時インポテンツということについてかなり大まじめにいろいろ勉強してしまったのでした。そうそう、女性側にも不感症ってのが増えてきているんだって。セックスするのがこわい、嫌い、痛い、と悩んでいる女性が実はいっぱいいる。そして本来は男性用であるバイアグラを取る女性も多いらしい。しかもかなり効くらしい。

 立たない男と、感じない女。その数はどんどん増えて、この手の薬品産業はますます商売繁盛していっているそうな。まったく人間てのはややこしい生き物ですね。  

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