第 46 話
            ブラインド・デート

 ここんとこなんだかパッとしない私は、景気付けにブラインド・デートをした。友達の紹介でオトコとご対面する、あれですね。

 何を隠そう実はブラインド・デートはこれで確か10回目。私はオトコ運はないのに、友達運にだけは恵まれていて、まわりの連中がいつもこんな私のことを気をもんで心配してくれています。しかし、長年の経験ですでに結果はわかってるのよね。ブラインド・デートでうまくいったためしがない。こっちがいいな、と思うとあっちがその気なくて、あっちがいいな、と思うとこっちが乗らない。どっちもその気になることがない。これが私の定番ブラインド・デートであります。

 ブラインド・デートのいい点は、相手の身元がはっきりしていること。しがない、あぶないニューヨークでは、わけのわからんあやしい奴の、なんと多いことか。シングル女のさみしさにつけ込む技をしっかり身につけた奴の、なんと多いことか。四つも五つも違う顔を持った奴の、なんと多いことか。そういう点で、友達の紹介となるとひとまず安心であります。友達もグッドルッキングのミリオネーラーは紹介してくれない代わりに、ジャンキーやレントも払えないようなたまげた奴はまず紹介しませんから。

 「でも、どうしてブラインド・デートってうまく行かないんだろうね。」と、やはりブラインド・デートで軽く30人くらいはこなしている友達がため息を吐く。仕事もしっかりしていて、顔も悪くない、性格もそこそこに良くて、運がよければアップステイトにサマーハウスを持っていたりする。そういうオトコでも、ブラインド・デートで出会ってしまうと、盛り上がれない。あまりにセット・アップされすぎていて、何か物足りない。反対に「こんなパーフェクトな人が何故に自分で相手を捜せないのか。あやしい趣味でもあるのでは。」などとよけいな詮索までしてしまう。

 で、一体おまえのブラインド・デートはどうなったんだよう?のノージーな皆様のために一応お伝えしますと、やはり今回もまた定番通りの結果でありました。やっぱり運命にひかれるようにして出会ってしまえないと、私は盛り上がれないタチなのかもしれない。

 ちなみに、今回のお相手はアイリッシュの大酒飲み。ご指名してきたのもアイリッシュ・バーでありまして、もう最初から、こらあかんわー、といやな予感がしていたのでした。「でも彼は人柄はいいし、顔もまあまあだし、仕事だってフリーランスとはいえちゃんと稼いでるし。真面目なおつき合いのできる相手を捜しているし。」との友達の言葉に、まあともかくビールの一杯も飲んで楽しく語らうのも悪くないか、と連れられていったのでした。

 その人は確かにいい人でありました。でもいつも思うけど、すごい悪い奴なんて実はそんなにいないよね。しかもブラインド・デートにのこのこ来るような奴にえらい根性の悪い奴なんてあまりいない気がします。いい奴なんだけど、ひどいオトコ、困ったオトコ、どうしようもないオトコ、そして合わないオトコってのが問題なわけです。

 「いやー、ボクは8歳の時から飲んでましてねえ。まあ、朝っぱらからでももちろん飲みますよ。人生酒、酒、酒ですなあ。これさえあれば、ボカァ、しあわせだなあ、がっはっはっ。」ひとりでギネスをがんがんお代わりしながら、身長190センチのでかい図体をゆさゆささせて、彼は本当にしあわせそうに高笑いするのでした。

 お勘定が来て、3人で割り勘となった時、この人と二度と会うことはないのだなあ、と少しホッとした私でありました。ああ、しあわせになりたい。

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