第 44 話
            今どきの女の子

  最近25歳の女の子とちょっと知り合いになった。若い女の子と話す機会って、ありそうでけっこうないものだから、今どきの女の子ってのは、一体どうしておるのか、と下世話な私はついあれこれ聞き出してしまいました。

 この女の子はニューヨークに来て5年。親の送金なんて全く受けないで、日本食レストランでウエイトレスのアルバイトをしながら、カレッジに通い、会計士の資格を取った。最近インタビューを受けたある日系の大手企業に採用が決まりそうらしい。つまり非常にしっかり者なのであります。会計士の資格にしても、別に会計士になりたかったわけじゃなく、手堅い職があれば、ニューヨークでしっかり生きていけると考えたから、と言う。うーむ。私なんて、生きていくために職を選ぶなんて考え、どうやっても浮かばないなあ。25歳の時、私は自分のやりたいことをやることで頭はいっぱいだった。食べていくために仕事をする、なんてこと、考えたこともなかったなあ。まあ、時代と環境が違うのでしょう。

 さて、この女の子の彼氏はなんと46歳。妻と3人の子持ちであります。この手の話って、ありそうで私のまわりには全然なかったもんだから、けっこう驚いた。なるほど、本当にこの手の話ってやっぱりあるのかあ、と驚いた。

 不倫話ならたまに聞く。でもこの女の子の話って、援助交際に近いものがある。まず毎晩(!)豪華なレストランに連れていってもらっているそうな。クリスマスやお誕生日にはティファニーでアクセサリーを買ってもらったそうな。そして最近彼の勧めに従って引っ越しを考えている彼女の新しいアパートは、彼が家賃を払うことになったそうな。ミッドタウンの彼のオフィスまで歩いてすぐの広いアパートだそうな。彼が会いたい時に勝手に訪問してくるんだから、レント払うなんて当然のことよ、と彼女は言います。「私が頼んだわけじゃない」とつけ加える。

 ところで、こんな風だからさぞかしその外見はキャピキャピのハデハデ、かと思うでしょうが、全くその正反対でして、化粧っ気のないナチュラルな顔で、地味なブラックのスーツの上下なんかをさっそうと着こなしているのよね。

 頑張って資格を取り、堅実な仕事も得て、自分でしっかり生活していけるタイプである。男に頼る気配は全くない。なのに、やっぱりゴージャスなレストランや金銀パールの光り物プレゼントには弱い。くれるものはすべていただきます。「でも私からおねだりしたわけじゃないもの」と、つけ加えるのを忘れない。「そ、そうだよね」と私はうろたえるしかない。こうなるともはや、最近の女の子の割り切った考えなんて、理解も何もできなくなる。おもしろがっているうちに、わかんなくなってしまって頭をぶんぶんしてしまいます。

 最後に、彼女はこんな風に言ってのけた。「20歳も上なんだよ。オヤジだよね。2,3年つき合ったら別れるよー」私はギョッとしてうろたえてしまいました。「そ、そうだよね。」とまた言うしかない。彼に対して愛ってものはないのですかあ?なんてばかな質問をしなくてよかった。そういうものは彼女にはわからないんだから。いや、必要ないんだから。

 一方で、一体この男の妻や子供はどう思っているんでしょうね。「毎日仕事が忙しくて忙しくて俺はおまえたちとメシもゆっくり食ってられんのよ」という子供だましのような言い訳、世のご家族、特に奥様たちってのは信じているのでしょうか。まさか25歳の女の子を毎晩ゴージャスなレストランに連れていって、光り物をプレゼントして、レントまで払ってやっているなんて、想像もしていないものなのでしょうか。それとも、わかっているけど、まあ、本気じゃないみたいだし、まあ、いいかあ、なんて大目に見てあげているのでしょうか。どうでもいいのでしょうか。わからないなあ。

 でもって、いちばんわからないのは男の気持ちであります。妻子があるのに、毎晩若い女の子とデートしてレントまで援助してやって、一体これって何なんでしょう。家族がつまらないなら、さっさと離婚してしまえばいい。若い女の子とはただの遊びだというなら、妻子と一家団欒した後に遊びに出かけて欲しいものです。今のところは何の問題も起こってないから、まあ当分これでうまくごま化していこう、とでも考えているんでしょうか。わからないなあ。

 というわけで、「最近の女の子考」を考えているうちに、世の中の人間関係ってのがよくわからなくなってきた今回の私であります。ともかくもう少し人間らしいこと、して欲しいよね、泣くとか笑うとか怒るとか喜ぶとか、ね。  

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