第 37 話
            変なガイジン

  あなたのまわりにも一人や二人、必ずいるであろう「変なガイジン」。私は最近、ふとしたきっかけで、その「変なガイジン」と知り合いになってしまいました。

 「変なガイジン」はとりあえず、日本に行ったことがある。彼らの行き先は六本木や渋谷に立ち寄ったあと、なぜか決まって長野とか群馬の山奥となっている。「変なガイジン」はひたすら太鼓とかユカタといった日本の伝統的文化物が好きで、部屋に提灯がぶら下がっているケースも多い。                   

 「変なガイジン」は日本人の女の子が大好きで、ジャパニーズのガールフレンドがサイコーと思いこんでいる。会話の中にキョーコだのジュンコだのといった名前がやたら出てくる。「変なガイジン」はもちろんジャパニーズの集まる場所や催し物に妙に詳しい。 

 「変なガイジン」にもいろんな趣味嗜好があって、ニンジャとかサムライを崇拝している正当派から、ゴジラやガンダムのプラモに囲まれた部屋で、ジャパニメーションに凝るオタク系、ペコちゃんやキティちゃんグッズを集めるギョーカイ系、あるいは”少年ナイフ”の追っかけやっている「変なガイジン」予備軍もいる。    

 「変なガイジン」は、そこまで日本が好きなくせに、どうしても納豆が食えない。だが、ひとたび「変なガイジン上級者」となると、ナマコが食える上に、完ぺきペラペラの流暢な日本語をしゃべる。日本のベルリッツあたりで英語の先生をやっていた、という熟練者が多い。「あやしい変なガイジン」となると、おナントカこ、とか、スケベな日本語だけはパーフェクトにマスターしている。

 さて、つい出来心で知り合いになってしまったその「変なガイジン」に誘われて、イギリスのバンド、バーブのコンサートに行ってきました。悪い予感がぴったし当たって、歌舞伎フェイスがプリントされ、「歌舞伎」とでかい筆文字で書かれたTシャツをさっそうと着こなして彼は登場した。そしてうれしそうに、「ゲンキデスカー!」と明るい大きな声で挨拶してくれた。どんなに私が恥ずかしい思いをしているか、彼には知るよしもない。まあ、日本人も周りにいないし、それだけは救われた。こういう時、同じ日本人に見られることほど恥ずかしいことはないのは、なぜなのか。

 ところがその翌日、友達のマキコから一年ぶりに電話があった。何か大切な用件かと思ったら、「きのう見たよ。」彼女はニヤニヤ声を弾ませて報告してきたのだ。やられた。彼女もあのコンサート会場にいたのだ。「あの人、彼氏?」「とんでもない!」「そうだよね。」と彼女はもホッとしたような、でも少し残念そうな感じで、「カ・ブ・キなんてTシャツ着てるオトコ、ちょっと困るよね。あれじゃ、変なガイジンじゃん。」と言い放ってゲラゲラ笑った。私はその笑いの中に、「変なガイジン」の知り合いのいる奴、という軽蔑を感じていたのでした。

 「私の友達があんたのこと、変なガイジンって言ってたよ。」とさっそく彼に伝えたら、「エー、ホントー!ボクハ、ヘンナガイジン、ヘンナガイジン、ワーイ」と大喜びしていやがる。ふと、その足元を見たら、ゲタをはいていた。悲しい。なぜか私はものすごーく、悲しい思いにとらわれていました。

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