第 34 話
            100本のバラ

 ヒロくんから興奮気味に電話が来た。「笑うなよ、絶対笑うなよー。実は、花屋に行って、この週末に彼女のアパートに届くように、バラのデリバリィー頼んで来たんだ。何本だと思う?じゃーん、100本!」

 ヒロくんは、「これをやってみたかった」そうです。そして、やってしまいました。真っ赤なバラ100本、しめて340ドル也。サプライズのお相手は、アメリカ人のジャキーちゃん。でも、彼がそこまで彼女に惚れていたとはとても思えない。何人かの友達と一緒にカラオケに行ったりしていた程度だったはず。「あんた、そこまで彼女に入れ込んでたわけ?」との嫌味まじりの私の質問に、「うーん、そういうわけでもないんだけどさ、ほら、オトコなら一回くらい、そういう絵にかいたようなアホくさいロマンチックがやってみたいわけよ。」と、何とも女にはようわからんお答え。

 でも、「女の子だって、バラ1ダースもらった、ってのは自慢にならないけど、100本となると、かなり自慢できるだろーが。」と言われると、そりゃそうだ、と納得してしまいます。だってさ、80歳のババアになった時、「こう見えてなあ、あたしだって若い頃にゃオトコからバラ100本プレゼントされたことがあったものよ、ふひゃひゃひゃ。」なーんて言えたら、やっぱりかなりクールだもんね。

 それで思い出した。あるパーティーか何かで若い女の子たちと話す機会があった。その時誰かが、「100人のグッドルッキング・オトコから1本ずつ、しめて100本のバラを贈られるのと、1人のフツーのオトコからバラ100本贈られるのと、どっちがいいか。」と質問した。そこにいた女の子たち全員が、後者がいいに決まってる!と即答したのでした。女の子はやはり、「自分にとってスペシャルな1人」と出会えたらシアワセなのよね。相手がどんなにいいオトコでも、バラ1本分の愛しかくれないなんて、意味ない。それなら、フツーレベルのオトコでも、自分には100本分の愛をくれるほうがいい。とまあこういうことですね。

 さて、問題のヒロくんですが、これがどうも100本のバラの威力はなかったらしい。彼女から、「もちろんうれしいけれど、でもバラ100本なんて、めったやたらと考えなしにプレゼントするもんじゃないわよ。お互いまだよく知らないのにこんなことするのは、間違ってるわよ。」と戒められてしまったそうです。

 そう、やはりオンナの方も受け入れ体勢が成立していないと、逆効果になってしまいます。『バラ100本プレゼントされたことのあるオンナ』にはなりたいけど、贈ってくれた相手の顔はあまり思い出したくないってことになりかねない。それに何より、オンナは敏感である。このオトコは本当に100本分の愛をくれているのか、それともただの100本のバラなのか、オンナはちゃんとかぎ分ける。甘く見てはいけません。

 「ま、ともかくアンタはこれで、『バラ100本プレゼントしたオトコ』にはなれたわけだから、満足でしょ。あはは。」と笑う私に、彼は、「でもなあ、340ドルも投資してしまったから、やっぱり、はいそうですか、とそうかんたんには引き下がれないよ。もうちょっと押してみるわ。元とらなきゃなあ。」だって。

 どうやら、高いレストランにいっぱい連れていってもらって、ブランドのバッグやお洋服をたくさんプレゼントしてもらって、オトコにはせっせと投資させた方がいいみたいです。


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