第 30 話
            おみやげ from ジャパン

 日本からのおみやげって、うれしいですよね。絶対日本でしか手に入らないものをみんな買ってきてくれる。その逆、つまり絶対アメリカでしか手に入らないおみやげ捜しは今や非常に困難です。日本で手に入らないものなんて、まずありませんから。

 この間日本に帰っていたノリコからのおみやげは、『アツギのタイツ3足入り』でした。これは重宝する。靴下、下着、化粧品は日本製に限るよね。その前に日本から遊びに来ていたエミコからのおみやげは、『オロナイン軟膏』『ムヒS』『美白効果の化粧水』『Hanako 春のコスメ特集』。わーん、泣かせるぜー。女友だちならではの細やかなおみやげ、とか思っていたら、この間やはり日本から帰ってきたヒロくんからのおみやげは、『ビオレ目もとうるおいパック』というすぐれもので、実は彼は数年前に帰国の際のおみやげに、『ビオレ毛穴すっきりパック』をいち早く運んでくれた、女心のわかる奴なのでした。

 いやはやさすが日本人、といつもびっくりするのは、「何か日本から買っていくけど、何がいい?」と聞かれ、軽い気持ちで「じゃあ、文庫本を何でもいいから一冊成田で買って来て。」なんて答えようものなら、ハードカバーがいっぱいつまった、でかくて重い紙袋を渡されたりします。しかも中に山村美沙とか赤川次郎なんてのが入っていて、ショックを受けるのでした。しかし、なぜ日本の方が買ってきてくれる本って、ミステリーが多いんだろう。ニューヨークに来てからというもの、自分のテイストじゃないとんでもない本との出会いが多くなって、それはそれでおもしろい。そう、選んで買っている余裕はない。なんせ日本語の本はまだまだ高いので、何だって貴重である。山村美沙だって読破したもんね。好き嫌いを言ってごねている場合ではないのだ。

 ところで、ニューヨークに住んでいる人たちが日本からのおみやげにしてくれるものは、基本的にコンパクトで運びやすく、もちろん高くないものを選んでいる。あげる方ももらう方もラクちんである。反対に日本の人達からのおみやげは、高かろうと重かろうとかさばろうと、いっこうに私はかまいません、あなたさえ喜んでくださるなら的なものが多く、もらう方はうろたえてしまいます。

 つい先日も、2、3回しか会ったことのないある人からほとんど脅迫のように、「友だちがそっちに遊びに行くのでよろしく!ついては、おみやげを持たせたいので、何か欲しいものをぜひ言ってくれ!」とわざわざ日本から電話をもらい、「そこまでいうなら、では『ビオレ目もとうるおいパック』をひとつ買ってきて。」とテキトーに答えたら、その全く面識のないお友だちさんは、このパックを4箱も運んで来てくれたのでした。

 恐縮する私に、この方は暗い顔で、「いやいや、こんなパックなんて全然かまわないんです。もっと大変なおみやげを、他の方に運んできましたから。」一体何を?…どこそこの地酒3本(ビン)、どこそこの本醸醤油2本(ビン)、どこそこのなんとか酢(ビン)、どこそこのお茶(缶)…。「ボクはそれを一本一本ていねいに新聞紙で包み、セータとセーターの間に注意して寝かせて、機内持ち込み手荷物にしてここまで運んできました。」「つらかったでしょ。」「ええ、まあ、かまわないんですがね、はは…。」

 たまげたことに、これらのおみやげの品々は届け先からのオーダーではなく、私に脅迫的に電話をしてきた例の人の選択らしい。こりゃひどいよなあ。ビンものなんか持たせられたら、壊れないかと気になってしょうがないじゃないか。みなさん、こういうおみやげをニューヨークに来るお客様に運ばせないであげてね。いただく側は誰もそこまで期待しちゃいません。『ビオレ目もとうるおいパック』で十分です。



home
essay contents
next