第 28 話
             マイアミとキーウエストへ

 そんなこんなで、マサコ、キンバリー、私の3人プラス、わざわざ日本から飛び入り参加のエミコが途中で加わり、女4人組はマイアミビーチへとクルマを飛ばしたのでした。 ところで、私たちのレンタルしたクルマはコンバチ、つまりかっちょいいまっ赤なオープンカー。屋根をガーッと開けると風と太陽の光が目一杯さし込み、もう気持ちいいったらありゃしないのよね。

 ところが、5分走って気がついた、、。オープンカーてば、ヤングとはもはや呼べない方には向いてないのです。100%の突風に耐えられるほどの体力がもはや、ない。その上、お肌に最悪の太陽光線。一時の快楽で、一生を台無しにしてなるものか。もはやヤングではないエミコと私は、「笑われたってかまわないやい。」と開き直り、スカーフやジャケットで顔中グルグル巻きにして太陽光線と戦うのでした。冷ややかなマサコとキンバリーの視線ももう気にしてられない。あんたら若いもんに、この気持ちがわかってたまるか。だが、もはや一体外がどのような風景になっているのかすら見ることもなく、おまけに首から上が呼吸困難の蒸し風呂状態で、ぜいぜいとマイアミビーチに到着したのでした。

 さて、マイアミであります。街に一歩踏み出して、たまげた。お腹が出てる人なんていないのよー。みんなフィットネスクラブでしっかり鍛えたスレンダーな体をさらし、気のせいでなく男も女もやたらみんな美しい。その上、いかにもカリフォルニア的なカジュアルなファッションセンスで洗練されている。

 「あー、つまんないよー。」私は思わずダダをこねた。だってさー、あるじゃない、ほら、その場所、その土地の空気ってのが。おもしろい人間が暮らす場所ってのは空気がすでにおもしろい。たとえばジャマイカなんて、空港に降り立っただけですで何かおもしろい空気の匂いがしたものよ。ガンジャの匂いも含めて。そう、クンクンするとわかるんだから。おいしい物と同じですね。ところがこのマイアミの空気はどうしても私には合わないのだ。空気がまったく匂わないのよね。無臭で平べったくて、いらいらしてくるのだ。

 さて、そんなわけだから、一体ではビーチで私らは何をしていたか。まだ学生やってるマサコは教科書をひろげ、宿題をやり始めた。ビーチ嫌いのキンバリーはベンチに腰掛け、本をめくっている。日本から着いたばかりで時差ボケしているエミコは、いびきをかいて木の下でお昼寝。そして私は、、、締め切り間際の原稿を書いていました。とほほ、な女4人組。

 「あー、つまんなかったね。」「ほんま、つまらんところやったなあ。」(後者は神戸出身のマサコです。)と私たちはマイアミにぶつくさ文句たれながら、またまたホテルを早めにキャンセルして、キーウェストへとクルマを走らせるのでした。

 「アンタら、見てみい!グルグル巻きになってる場合やないでー。」のマサコのお叱りにソーッと目だけ外に出して外を覗くと、こりゃ、すごい。これは、ちょっと、いい。こういう風景や感動をうまく描写できない自分の至らなさが情けないのですが、とにかく、クルマが海の真ん中を海とほぼ同じ高さで突っ走っている。モーターボートの感覚とも違う。そして後ろと前には道が続き、右と左には海が続く。海のど真ん中に長いストリートがあるわけです。モーゼの十戒じゃないけれど、海の隙間にできた通り道を走っているような不思議な感覚に陥ってくる。今回のフロリダへの旅の中では、ここキーウエストがいちばんのおススメでした。キユーバに近いこともあり、食べ物も豆やイエローライスやプランタンといったカリビアン系が多く、私にはうれしかった。

 ところで、ニューヨークに帰って来て、腹の出ている奴やハゲてる奴(私の独断ですが、ニューヨークってハゲが多い)を見ると、なぜかホッとした。雪の降り積もる道ばたの端っこにうずくまって眠るホームレスや、ださいファッションのおばちゃんたちにも、なぜがホッとした。いろんな人種の、わけわからん連中がわらわら集まり、勝手に生きている。こんな場所、他にない。ここってやっぱりアメリカじゃないんだねえ。

home
essay contents
next