第 7 話
       愛と自由のお話

 ウエスト・サイドのとあるクラブで、「激しいもの」を見てしまった。ここは23歳以下お断り、スニーカー、ジーンズお断り、90パーセント以上がブラック。そしてクールなブラック・ミュージックオンリー、のかなりおしゃれで大人のクラブであります。みんなしっかりゴージャスなファッションで決めていて、なかには黒のロングドレスなんか着ている女の子もいるもんだから、今夜は何か特別なパーティでもあるのか、ときょろきょろしてしまった。

 さてその夜、一体何を目撃したかって?ええと、ひどく書きづらい単語をいきなり出します。小人、です。小人が、すげーいい女をエスコートしてトコトコ入ってきたのです。高そうなスーツをビシッときめ、びかびかのアクセサリーをじゃらつかせて。そして、まっすぐダンスフロアのど真ん中に突き進み、ストローブ・ライトを浴びて、狂ったように踊りだしたのです。あ.....、なんかこれは見てはいけない、と目をそらせようとするんだが、そらせない。小人はその小回りの利く体をフルに活用して、セクシーな彼女の腰にくるくるからみつき、汗だくでノりまくっている。彼女もアッとかウッとかうれしそうにあえいでいるじゃないか。なんだかエッチすぎて、圧倒されてしまいます。

 驚いたことに、周りの人たちは全くこのカップルに関心がない。みんな自分が踊って楽しむことに集中していて、ザワッともしない。つまり、こんなことは別にとりたてて無理して目をそらしたり、逆に好奇心を示すようなことではない、ってことです。つまり、慣れているってことです。そうなのよね、こういう体の不自由な人やエッチなことにあまり慣れていないのは、日本人の私達くらいなのよね。

 「ひぇー!きょーれつ!」。ボー然と立ちすくむ私達の目の前を、シャーッと何かか横切った。なあんと今度は、車椅子。車椅子に乗って、これまたタキシードでビシッときめた男が元気いっぱいに入ってきた。シャーッ、「ヘィ、ベイビイ踊ろうぜ。」シャーッ、「ようっ、彼女、そのドレス、セクシイだぜ。」かたっぱしから女の子たちをナンパしている。

 そうなのよね。アメリカって、こういう体の不自由な人がぴんぴんイキがいい。日本のように、恥ずかしいだのみじめだのといったどんよりムードは、ちゃんちゃら、ない。人目を気にして家にこもっている奴なんていない。というより、誰も人のことなんざ気にしてくれやしない。

 そして一方で、こういう言い方はまたヒンシュクものですが、小人が好きな人がいて、そういう嗜好をこれまた隠そうともせず、ちゃんとおしゃれなクラブに一緒に来て、エッチに踊っているわけです。とかなんとか、私がこむずかしいことを考えているうちに、例の車椅子くんも、かわいこちゃんとハデに踊り始めちゃったぞ。相手も見つからずボーッとつっ立っている私らがいちばんマヌケであります。しかし、こんなの見せつけられると、どーせアタシなんてブスだしトシだし、なんてめめしいこと、言えなくなりますね。負けるなあ。

 ブラックの友達のアンディくんによると、「逆のカップルもよく見るよ。背の高いグッド・ルッキングの男と小人の女の子。手が曲がっている人や両足のない人だって、かわいい彼女やナイスガイを連れてるし。」すごいなあ、みんなそういうの偏見ないんだあ、とストレートに驚く私に、「マイノリティに対する偏見はいっぱいあるけど、体の不自由な人に対する偏見なんてないよ。それと、小人とエッチするのが好きとか、車椅子の男しか愛せないとか、そういうのもあるよ。(な、なんだ。それっていわゆる変態かー!?などとまた心の中でじたばたする私。)でも、それもまたLOVEなんだから、隠す必要もないしね。それに、ここはニューヨーク。みんな自由に生きているのさ。(あー、しかし自由ってたまに目の毒なのよー!とまた心の中でもがく私。)」とにかく、最後は愛と自由についてのお話になってきた。

 今回は「体の不自由な人」についてでもなければ、「変態」についてでもなく、何がいいとか悪いとかってレベルでもなく、はてしなくなんでもあり、なのよね、ここじゃ、というとりつくしまのないお話でありました。いやはや、私なんぞ頭のかたい常識ねーちゃんだわ、まだまだ。



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